私たちが住む似首(にたくび)地区の氏神様である事代主神社では、お正月に伝統行事「みんかけ」が行われます。
昭和の初めまでは、新婚さんの家におめでたい格好(七福神)をした若者たちが押しかけて、庭や縁側でご馳走やお酒を振る舞ってもらったことに由来しますが、この風習は一度途絶えてしまいました。
虎屋創業者の弟(犬塚忠生、南こころの叔父で現取締役)は、大正生まれの先輩たちに話を聞いて回り、「昔はこんな集落だったんぞ」と伝えようと、昭和50年代に「似首みんかけ保存会」を立ち上げました。昔どおりではありませんが、今もお正月には地域の子どもたちが七福神の格好をして氏神様に舞を奉納し、家内安全や商売繁盛を祈願します。この日のためにお年寄りと子どもたちは月1回舞の稽古をし、世代をこえた交流が生まれているのです。
昔この地区の漁民は貧しかったので満足にお酒を飲む機会など滅多になく、「新婚さんの祝いなら“なんじゃろ、あんじゃろ”(何でもあるだろう)」と考えた「のぼせもん(お調子者)」の大騒ぎから生まれたこの行事。地域のありし日の姿だけでなく、貧しさを面白おかしく笑い飛ばした五島の人たちの心意気が伝わってきますね。私も地域一番の「のぼせもん」ですから、「みんかけ」の心の風景をうどんのように細く長く伝えていきたいと思っています。(慎)
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